福島を移動する日

2012.8.27

フェスティバルフクシマの撮影が終わり、京都に戻るまで8時間ほど時間がある。
市内を散策しようと思いどこへ行こうか駅前をうろうろする。
市外へ足を伸ばしたとしても帰りのバスまで充分時間があるので相馬市へ行こうと思い立つ。
うまく電車が連絡すればそのまま南相馬へもいける。
ひとまず相馬市役所行きのバスに乗る。
まだまだ残暑が厳しく、晴天でアスファルトがカラカラに乾いている。
初めての場所へ向かう高揚と、どこまで太平洋の近くへ行けるのかなと
漠然とした恐ろしさと切なさが湧いてくる。

相馬へ向かうバスは山の中を走り、2時間ほどで相馬駅の近くに到着する。建物や道路に地震の跡が残っていたりするのだろうかと
きょろきょろ素早く目を動かしながら町なかを眺めつつ駅へ向かう。
後ろめたいような気持ちと、それを打ち消したいような気持ちが混ざる。

相馬駅からはJRを使い、電車で20分ほど南にある原ノ町駅へ向かう。
原ノ町駅より先は警戒区域に指定されていて、電車で進むことができるのはそこまで。
途中の駅で高校生が沢山乗り込んでくる。もう夏休みは終わっているのだろうか。
原ノ町駅に到着、ひっそりとしてのどかな駅前に私の地元を思い出す。

駅のコンビニでアイスとポカリスエットを買って、先の駅の方向へ行ってみようと思う。
滞在できる時間は1時間しかないから、30分歩いて残りの時間で帰ってくるまでの
短い時間の中でしか町を見ることは出来ないけれど、散歩をしにきたと思って歩いて過ごそう。
線路と平行する道路を歩く、車は通るけど自転車も歩いている人も見かけない。
ますます地元に似ているなあと思う。田舎では移動はどうしても車に頼るしかない。
歩いていると緊張していることに気づく、こんなにおだやかな場所にいるのに
目に見えない放射能のことをおぼろげに心配に思う。
目に見えないし感触も無いものが存在しているのかもと想像すると、
ただ歩いているだけでもこんなに気を張りつめるものなのだなと思う。
除染について心配をする必要はないのだろうけど
道ばたに腰を下ろして休んだり、アイスを歩きながら食べるのが好きな私は
そわそわと妙な気持ちになる。そしてそんな気持ちを寂しく思う。

きっかり1時間歩いてまた電車に乗ってきた道を戻る。
薄暗いなか田んぼや畑が広がっているのが見える。きれい。
相馬からは亘理まで代行バスで移動し、亘理からはまた電車で福島に戻る。
バスの車内は蛍光灯が明るくて、色がよくわからない。
撮った写真を見返したり寝たりしながら福島駅まで過ごす。